赤血球とは

酸素を運ぶ赤い座布団のようなかたちの細胞

赤血球は呼吸によって取り入れた酸素を体の隅々まで運ぶ役割をしています。血液が赤いのはこの赤血球の色です。また座布団状の形をすることで、組織の隙間にも入ることが可能となり、酸塩基平衡などの状態によって酸素結合能が変わったりする多機能な座布団です。赤血球の量を表す数値には赤血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値などがあります。

-具体的な項目-

  • 赤血球数
    血液1μL(=1m㎥)の中に含まれる赤血球の数です。
  • ヘモグロビン値
    赤血球の中に含まれている鉄と結合したたんぱく質(ヘム蛋白)で呼吸で取り入れた酸素を臓器に運ぶ役目を担います。貧血の重要な指標です。
  • ヘマトクリット値
    血液の中で赤血球が占める比率を表します。貧血や多血症の評価に使われます。

1. 貧血

一般に男性ではヘモグロビン値<13.0g/dL、女性では<12.0g/dLが貧血と定義されます。
消化器もしくは婦人科臓器からの出血による鉄欠乏性貧血の頻度が高いです。実臨床では、複合的な要因で貧血に至っていることがほとんどです。

  • 鉄欠乏性貧血
    最もよく見られるタイプの貧血で多くは女性の月経過多や子宮筋腫などによるものです。
    一方、男性や閉経後の女性で鉄欠乏性貧血を指摘された場合には、がんや潰瘍などによる胃や腸からの出血がないか調べる必要があります。
  • 腎性貧血
    腎不全によって透析中の方に多く見られます。腎臓(特に間質)から分泌されているエリスロポエチン(以下、EPO)という造血因子の欠乏または不応により発症します。EPOの注射、最近ではHPF-PIなどの薬物療法で治療可能です。
  • その他の原因による貧血
    慢性疾患(感染症や膠原病、がん等)に伴う貧血。溶血性貧血、白血病など、様々な原因で貧血をきたします。
  • 骨髄異形成症候群(Myelodysplastic syndrome: MDS)
    造血機能の根幹である幹細胞に異常が生じることで、白血球・赤血球・血小板の量/質的な造血障害をきたします。複数の原因で起こるとされ、年齢とともに発症率があがることや放射線治療を受けた患者の発症率が上がるため、放射能や化学薬物、発がん物質との関連が指摘されています。どの造血系統が正常に機能しなくなるか症例ごとに異なります。

2. 多血症

一般に男性でヘモグロビン値18g/dL以上、または、ヘマトクリット値51%以上、女性でヘモグロビン値16g/dL以上、または、ヘマトクリット値48%以上が多血症と定義されます。いわゆる血液が"濃い"状態で、顔が赤らんだり目が充血したりすることもあります。多血症は血液を"ドロドロ"にして、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓症リスクとなりうるので注意が必要です。

  • 相対的多血症
    喫煙習慣、慢性ストレス、重度の脱水などがある場合は、血液の濃縮によって見かけ上多血症となることがあります。
  • 二次性多血症
    心臓や肺の病気、高山での生活などによって慢性的な酸素欠乏にある場合に酸素をより効率的に運ぼうとして多血症となります。
  • 真性多血症
    赤血球を作る細胞が腫瘍性に増殖する血液がんの仲間です。