不明熱には丁寧な問診と診察、血液・画像検査がかかせません。

いろんな検査をしても熱の原因が分からない、という状態を不明熱と定義していました。現在は、CT検査などのよい医療機器が登場しました。38.3度以上の発熱が3週間以上持続すること。3日間以上の入院または3回以上の外来診療で原因がわからない発熱。それらを、不明熱と定義されています。

不明熱にはどんな理由がありますか?

一般的には、感染症、悪性腫瘍、膠原病が3大不明熱疾患と言われます。それらの3大不明熱疾患を否定したうえで、さらに自己炎症症候群などを検査していくことが定石とされております。実際には、画像診断(超音波検査・CT検査など)の進歩によって原因がわかります。深いところにある感染巣(膿瘍などの感染症)は、以前に比べ早くに見つかります。早期に発見されるようになりましたが、未だに内科医としては注意は必要です。

主に、感染症では結核、心内膜炎(心エコーでわかります)、腹腔内膿瘍(腹部エコーやCT検査でわかります)の3つから疑います。実際に3週間わからなかった患者様で、超音波検査をして、「脾臓」に膿瘍があったことがあり、脾臓摘出で治癒しました。という経験は豊富にあります。放置していれば、細菌が血液中に繁殖し、死に至る可能性もあったわけです。もちろん脾臓はリンパ節の一種ですので、今後は感染症により注意していかなくてはいけません。

それでも分からない不明熱の患者様をよく対応していました。問診を大事に考えており、生活環境・渡航歴から再度精査していきます。血液疾患、膠原病が見つかることもありますので、骨髄検査などの特殊検査のため、時間を要してしまう点はありますが、総合病院クラスの検査が行えるように診療を行っています。

不明熱にもたくさんの種類がある

発熱や随伴症状のちがいで疑う疾患

1.40℃以上の極端な発熱
熱中症、視床下部(脳の一部)機能不全、髄膜炎、熱帯熱マラリア、副腎腫瘍などを疑います。
2.比較的徐脈
熱が上がると、脈拍数も一般的に上がります。39℃のときは脈拍数は110以上になることが多いです。しかし、熱のわりに脈拍数が上がらないことを「比較的徐脈」といいます。こちらは病気を探し出すヒントとなります。、腸チフス、サルモネラ症、マイコプラズマ、レジオネラなどの感染症や、薬剤熱、がんなどの熱があります。
3.回帰熱
発熱期間と無熱期間が交互にあらわれるのを回帰熱といいます。ブルセラ症、ホジキン病、肺外結核、マラリア、ライム病などでみられます。
4.消耗熱
最高値と最低値の差が1.5℃以上のことをいいます。腫瘍、腎盂腎炎、胆管炎、結核、リンパ腫や薬剤反応であることが多いです。

不明熱の原因疾患

感染性:新型コロナウイルス、HIV感染症、結核、心内膜炎、化膿性椎体炎、梅毒、動物原生感染症(ブルセラ症、ライム病など)、マラリア、日本紅斑熱など
悪性腫瘍:リンパ腫、肝転移、腎細胞がん、心房粘液腫など
膠原病:巨細胞動脈炎、全身性エリテマトーデス、血管炎、リウマチ熱、Still病など
その他:薬剤、熱中症、悪性高熱、多発性肺塞栓症など